エピソード3

秋田に住んでいた時の話です。当時娘は小学校1年生でした。秋田の冬は雪が多く、学校に行く時も朝から吹雪いていたことも度々ありました。小柄な娘も一生懸命雪道を歩いて学校に通っていました。雪の積もった日は大体スキーウエアに身を包んで耳当て帽子をかぶり、手袋をし長靴をはいて完全防備で登校していました。もちろん背中にはランドレル。
 その日は午後3時半からピアノのレッスンの日でした。朝出かける前に「今日はピアノの日だから寄り道しないで真っ直ぐ帰るんだよ」としっかり言い聞かせて見送りました。ピアノのの日は時間に間に合うように家に着くまで毎回心配でした。朝、目と目を合わせてちゃんと約束したので大丈夫だと信じてながら…。
約束をして学校へ向かっていきました。そして学校が終わってそろそろ帰宅時間になってきました。まだかなぁ…。もう帰ってくるはずなんだけど…。そろそろピアノの先生がいらっしゃる頃なのに…。何度も外に出てみました。時間も迫ってくるのに…。そして遂に先生が来られました。でも当の本人はいない。30分以上雑談で先生を待たせてしまいました。何度もベランダから子供の姿を探しましたが全く見えません。待たせるのも申し訳なくて、先生に謝り、後日又お願いしようとした時でした。
 ふと窓を見たら大きな雪の玉を無心に転がしている娘の姿を見つけました。赤いキティちゃんの帽子に赤い長靴、赤い手袋で分りました。子供の胸の高さまであるなんとなんと大きな雪玉を必死に転がしていたのです。帰って来るなり娘曰く「学校からずっと雪玉を作りながら転がして来たんだよ。凄いでしょ」と。学校までは歩いて20分の距離。横断歩道もあったのにずっと転がしてきたとは。湯気が出るような真っ赤な顔で興奮冷めやらぬ満足気な様子に、ピアノの事などすっかり忘れてた娘を、叱るに叱れず思わず笑ってしまいました。
「小さな身体」で「大きな雪玉」、雪道を「雪玉転がし」で帰宅した娘の姿、今でも思い出しては笑ってしまいます。懐かしい秋田の思い出です。